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JPMorganの純金利収益13%増は利ざや改善の証拠か

2026年7〜9月決算の純金利収益を市場部門と残高要因に分解し、前年との比較と前四半期からの利回り改善を区別する。

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情報基準日:2026-10-17(公開日とは異なります)

Market Note|2026年10月17日時点

先に答え

前年同期比では、主な証拠は利ざやの拡大よりも、取引残高の増加と市場部門の影響を示している。JPMorgan Chaseの2026年7〜9月期は、管理会計ベースの純金利収益(NII)が13%増えた。しかし市場部門を除くと伸びは約6%で、同じ範囲の純金利利回りは前年同期の3.73%から3.70%へ小幅に低下した。一方、前四半期からは利回りが改善している。前年比と前期比を分けて見ることが、この決算を読む出発点になる。

今回の決算が投げかけた問い

10月13日の決算発表で、JPMorganは純金利収益の増加を報告した。さらに2027年の中央ケースとして、市場部門を除くNIIを約1,070億ドルとする初期的な見通しを示している。2026年の見通しから示唆される約972億ドルを上回る水準だ。これは実績ではなく、残高の拡大と、会社が想定するより高い金利水準の影響を見込んだ予想である。資料の表現は「higher rates」で、中央銀行の追加利上げの時期や回数を示したものではない。2026年10月13日決算発表、全社業績、同日決算説明資料、印字8ページ「Outlook」

この先行きの強さを判断するには、足元の増収が何から生まれたかを確かめる必要がある。金利が動いただけで増えた収益なのか。預金や貸出を増やして得た収益なのか。あるいは市場取引の会計上の計上先による部分が大きいのか。それぞれ、翌年まで続くための条件が違う。

NIIの伸びと利ざやの伸びは別の数字

NIIは、受け取る利息から支払う利息を差し引いた金額である。売上高に近い収益項目であり、貸倒費用、人件費、システム費などを全て差し引いた最終利益ではない。

本稿では会社が業績説明に使う「managed basis」を中心に比較する。これは税免除の収益などを課税対象と同等に比較する調整を含む非GAAP指標だ。会社全体の最終純利益を増やす調整ではない。GAAPの数字と混ぜず、各年とも同じ管理会計ベースで比較する。決算補足資料、印字7・28ページ

米ドル、単位は十億ドル2025年7〜9月2026年7〜9月増加額
全社NII、管理会計ベース24.07127.1453.074
うち市場部門のNII0.6802.4191.739
市場部門を除くNII23.39124.7261.335

出所は2026年10月13日決算補足資料、印字28ページ。増加額は筆者計算。

全社NIIの増加額30.74億ドルのうち、市場部門のNIIの増加が17.39億ドルを占める。割合にすると56.6%だ。ただし、これは利益増加の56.6%を市場部門が生んだという意味ではない。

会社は、市場部門では金利収益と非金利収益に相殺関係が生じると説明している。例えば、利息を生む証券を保有し、そのリスクをデリバティブで管理する場合、証券の利息とデリバティブ損益が違う収益項目に入る。このため、MarketsのNIIだけを見ても、市場取引全体の採算は分からない。伝統的な貸出・預金事業の傾向を読みたいなら、市場部門除外の指標を併せて見る理由がある。ただし、除外後にも投資や資産負債管理の影響は残り、個人向け銀行業務だけの数字になるわけではない。決算発表、非GAAP指標の注記2c

同じ範囲で金額と利回りを比べる

市場部門を除くNIIは前年同期比5.7%増えた。これに対し、同じ範囲の平均運用資産は6.3%増加し、純金利利回りは3.73%から3.70%へ低下した。利回りの差は0.03ポイント、すなわち3ベーシスポイントである。決算補足資料、印字28ページ、同一定義の比較から計算

収益の金額は、運用する残高と、その残高から得られる収益率の組み合わせで決まる。利回りが少し低下しても、それ以上に残高が増えれば、NIIは増やせる。今回の数字は、その説明と整合的だ。会社自身も、預金残高、カード貸出、ホールセール貸出の増加が収益を押し上げ、低い金利の影響が一部を相殺したと説明している。決算説明資料、印字2ページ

ここから「利下げがあっても銀行には影響がない」と一般化することはできない。残高が増えた理由には、顧客の獲得、商品の構成、資金需要、投資への振り替えなどが絡む。純金利利回り自体にも、預金コスト、貸出と証券の構成、ヘッジ、資金調達方法が影響する。公表された集計利回りを使って、政策金利だけの寄与を精密に逆算するのは無理がある。

また、本稿の純金利利回りはNIIを運用資産と対応させた年率の指標だ。「貸出金利から預金金利を単純に引いた差」とは異なる。無利息預金や預金以外の調達も関わるため、商品金利の差をそのまま全社の利ざやに置き換えない方がよい。

前四半期からの改善は否定しない

前年との比較で利回りが下がったことと、足元で改善が始まったことは両立する。市場部門除外の純金利利回りは2026年4〜6月期の3.65%から7〜9月期の3.70%へ上がっている。決算補足資料、印字28ページ

この動きを重視するなら、「前年から利ざやが拡大した」ではなく、「前四半期からは改善している」というのが正確だ。ただし、四半期の回復が続くかはまだ別問題になる。資産の入れ替えや預金金利の見直しが先行すれば、収益への影響は時間差で表れる。単一四半期の改善を、そのまま翌年の固定された成長率にすることはできない。

逆に、残高増加を低く評価し過ぎるのも適切ではない。安定した預金を増やし、リスクに見合う貸出を積み上げられるなら、利回りの急拡大に頼らず収益を増やせる。それが顧客基盤の拡大に裏付けられている場合、金利の追い風だけより継続しやすい可能性がある。確認したいのは、量を増やすために高い預金金利を払ったり、貸出基準を緩めたりしていないかだ。

収益増が利益増につながるかまで追う

NIIが伸びても、貸倒費用が増えれば株主に残る利益は減り得る。特にカード貸出などでは、高い利回りと信用損失を切り離して評価できない。新しい貸出の損失は、実行した四半期より後で表れる場合もある。

今回の全社決算では、非金利費用が前年同期比12%増えた一方、信用損失引当費用は前年同期を下回った。したがって、最終利益の変化をNIIだけの成果とみなすこともできない。費用増、実際の貸倒れ、将来の損失に備える引当の積み増しを別々に読む必要がある。2026年10月13日決算発表、全社業績説明

2027年の約1,070億ドルという市場部門除外NIIの中央ケースも、この利益への橋渡しを保証するものではない。数量と金利についての前提が実現するかに加え、その収益を得るための調達費用、信用損失、運営費が重要になる。予想NIIに一定の利益率を掛けるだけでは、これらの変化を落としてしまう。

次の決算で見方を変える条件

「量の拡大が主な支え」という現時点の読みを検証するには、市場部門を除いた同じ範囲で、平均運用資産、NII、純金利利回りを並べ続ける。

平均運用資産の伸びが落ち着いてもNIIが増え、利回りが前年同期を上回る改善を持続するなら、利ざや主導の成長という説明を強められる。反対に、残高を増やしてもNIIが伸びず、資金調達費や信用損失が上昇するなら、量の拡大をそのまま収益力の向上と見る考えを弱める必要がある。

市場部門については、NIIと非金利収益を合わせた総収益で確かめる。ある項目の急増が別項目の減少で相殺されていれば、NIIの伸びだけを翌年に延ばすべきではない。

今回の決算が示したのは、JPMorganが残高拡大を収益につなげていることと、前四半期からの利回り回復である。全社NIIの13%増という見出しを、前年同期からの一様な利ざや拡大と読むには、証拠が足りない。

※2027年の数値は会社の初期的な中央ケースであり、実績や確約ではない。本稿はJPMorganの開示の読み方を検討するもので、他行への一般化や売買の推奨を目的としない。