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HBMが売れても、内製の強みは続くのか――カスタムメモリーの利益配分を読む

NVIDIAのNVHBM公式説明から、HBMの設計・製造分担と利益配分を考える。Samsungの外注報道は未確認として区別し、内製率、出荷量、性能改善を採算へつなぐ条件を整理する。

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情報基準日:2026-10-19(公開日とは異なります)

情報基準日:2026年10月19日19:00 JST。NVIDIA、Samsung、SK hynixの公式説明と、10月18日の外注報道を分ける。製造分担、採用数量、価格、製品別利益率について未確認の数値は使わない。

まず答え

HBMの販売が増えることと、メモリー企業が製造工程の価値をすべて社内に取り込めることは、同じではない。顧客専用の設計が増えると、記憶する部分、信号を扱う部分、設計、製造、組み立てを誰が担うかが変わる。一部を外注しても、製品を採用してもらえる確率や生産量が上がれば、企業全体の利益が増える可能性はある。

10月18日、Seoul Economic Dailyは、SamsungがNVIDIA向けのカスタムHBM「NVHBM」のベースダイ製造にTSMCを利用すると、業界関係者の話として報じた。本稿で確認した企業の公式資料には、この個別の製造分担を裏付ける発表は見当たらない。従って、外注先と供給条件が確定した事実としては扱わない。Seoul Economic Dailyの報道

一方、議論の土台となるNVHBMの仕組みは、NVIDIAが8月26日に公式発表している。今回の問いは、外注報道の真偽だけに依存しない。「HBMが成長すれば、内製できる企業が必ず最も有利なのか」を、既に公表された設計の変化から考える。

HBMの中には、役割の異なる半導体がある

HBMは、複数のDRAMチップを縦に積み重ねた広帯域のメモリーである。DRAMの層がデータを記憶し、その下にあるベースダイが外部との接続を担う。SK hynixは、ベースダイにロジック工程を使うことで、限られた面積に機能を追加し、顧客に合わせた性能や電力効率を実現しやすくなると説明している。SK hynixの技術提携発表

NVIDIAのNVHBMは、従来は計算用チップ側に置いていたメモリーコントローラーを、HBMのベースダイへ移す構成だ。メモリーコントローラーは、データの読み書きを制御する回路である。記憶するDRAMの層を増やすだけでなく、データをやり取りする仕組みまで共同設計する点に特徴がある。NVIDIAの公式発表

投資家に重要なのは、同じ「HBM売上」という言葉でも、中に含まれる仕事が変わり得ることだ。DRAMを作る会社、ベースダイの設計を持つ会社、その回路を製造する会社、積層や接続を担う会社は、必ずしも同じではない。製品全体の市場成長率だけでは、各社が受け取る対価や負担する費用は分からない。

確認できた内製と外部連携の範囲

Samsungは5月29日、HBM4Eのサンプル出荷開始を発表し、1cと呼ぶDRAM工程と、自社ファウンドリーの4ナノメートル・ロジックベースダイを採用していると説明した。これは公表された製品構成であり、今回報じられたNVIDIA向けNVHBMの製造分担とは別の情報である。サンプル出荷の発表だけで、顧客ごとの量産採用や販売数量まで確定するわけではない。SamsungのHBM4E発表

また、SK hynixは2024年4月19日の時点で、HBM4のベースダイにTSMCの先端ロジック工程を採用する計画と、パッケージング分野での協力を公表していた。HBMのメモリー企業と受託製造企業が役割を分ける発想自体は、今回突然現れたものではない。ただし、この過去の提携発表を使って、Samsungの今回の報道内容まで確認済みとすることもできない。SK hynixの提携発表

ここまでの整理は、次のとおりになる。

項目確認できたことまだ断定しないこと
SamsungのHBM4E自社DRAMと自社ロジック工程を使うサンプルを公表全顧客の製品が将来も同じ内製構成になること
SK hynixとTSMCベースダイと実装に関する連携計画を公表済み全世代・全顧客の製造条件が同じであること
NVIDIAのNVHBMベースダイへ制御回路を移す設計を公式説明個別のファウンドリー、価格、供給配分
Samsungの外注報道10月18日に関係者情報として報じられた当事者の正式契約確認、受注量、利益への金額効果

内製を減らしても、利益が増える場合がある

ここからは、上記の技術構成を踏まえた条件付きの分析である。

内製には、設計と製造の調整を社内で進めやすく、外部の製造会社へ支払う対価を抑えられる可能性がある。ただし、内製の工程には設備投資、開発費、稼働率の管理、良品を安定して作る負担もある。社内で作るというだけで、総費用が必ず低いとはいえない。

外注する場合は、購入するベースダイの費用が発生する一方、顧客の要求する設計や製造工程を使いやすくなる可能性がある。もしそれによって採用、量産の立ち上げ、出荷量が改善するなら、製品一つ当たりの取り分が小さくなっても、合計の利益が増える場合がある。

反対に、採用量が増えず、外注費だけが上がり、既に持つ設備の稼働率まで下がれば、利益への負担が大きくなる。外注先の供給能力に制約があれば、DRAMを用意できても、完成品として出荷するまで待たなければならない可能性もある。

従って、評価したいのは外注費だけではない。販売量、販売価格、完成品の良品率、内製設備の利用状況、追加投資を合わせて見る必要がある。連結決算では社内部門間の売上は消去されるため、「ファウンドリー部門の社内売上が減る額」を、そのままグループ全体の利益減少額にすることもできない。

顧客側の設計が共通化すると、交渉の軸も変わる

NVIDIAは、NVHBMについて複数のメモリー供給会社から利用できる共通実装を整え、供給会社ごとの統合・認定の作業を減らす方針を示した。最初に協業する企業としてAmazonのAnnapurna Labsを挙げている。これは技術協業の発表であり、NVIDIAが各メモリー会社へ何個発注したかという開示ではない。NVIDIAの公式発表

この共通化が実際に進めば、顧客が供給先を増やしたり、調達を振り分けたりする負担は小さくなる可能性がある。その場合、メモリー会社の競争は、独自の接続仕様だけでなく、品質、量産能力、納期、価格へ移りやすくなる。設計を主導する顧客や、必要な製造工程を持つ企業の交渉力が高まるという見方も成り立つ。

ただし、設計が共通でも、各社の製品をいつでも自由に入れ替えられるとは限らない。量産時の歩留まり、積層、熱、検証、安定供給には違いが残る。供給の余裕が小さければ、実際に大量出荷できるメモリー会社の重要性はむしろ増す。共通化が直ちに値下げ競争を意味するわけではない。

性能改善を、そのまま利益改善率にしない

NVIDIAはNVHBMについて、標準HBM4Eとの比較で、スタック当たりのメモリー帯域を最大30%増やし、HBMの電力使用を最大15%抑えられると説明している。いずれも会社が示す設計上の効果であり、すべての顧客環境で確認された独立の実測値としては扱わない。NVIDIA技術解説・性能表と帯域/電力の節

帯域は、一定の時間に運べるデータの量である。計算回路がメモリーからのデータ待ちで止まる処理なら、帯域改善は利用効率を高める余地がある。一方、計算処理、チップ間通信、ソフトウェアなど別の部分が制約なら、同じ割合で処理全体が速くなるとは限らない。

電力も同じだ。HBMはシステム全体の一部なので、HBM単体の電力削減率を、サーバー全体やデータセンター全体へそのまま掛けることはできない。メモリー以外の消費電力が変わらないと仮定する場合でも、全体への効果は、HBMが占める電力比率に左右される。

さらに、技術的な効率改善が誰の利益になるかは契約による。顧客が同じ電力で処理を増やせる価値を、製品価格にどこまで反映できるか。製造の複雑化や認定費用が増えないか。これらが分からなければ、帯域や消費電力の改善率から、SamsungやTSMCの増益率を計算することはできない。

楽観と警戒を分ける確認点

前向きに評価できるのは、外部連携や共通設計によって顧客の認定が進み、出荷量と品質が安定し、追加費用を含めても利益額や現金回収が改善する場合だ。内製にこだわるより、実際に売れる製品を早く供給することに価値がある。

中立的なケースは、HBMの売上は伸びるが、ベースダイの調達費、開発費、製造の立ち上げ負担も増える場合。市場の拡大と各社の取り分が同時には伸びない可能性があり、売上の増加だけでは結論を出せない。

警戒が必要なのは、顧客向けの開発や設備投資を先行させても認定が遅れ、代替用途も限られる場合だ。顧客専用の設計が増えるほど、その顧客の計画変更や製品世代の切り替えにどこまで対応できるかが重要になる。

次の確認順序は、第一に当事者の製造分担の公式開示、第二にサンプル・認定・量産出荷の段階、第三に数量と採算への影響である。工程の名前や微細化の数字だけで優劣を決めず、どの顧客の、どの製品を、いつ安定供給できるかを追いたい。

日本の装置・材料企業についても、HBMの高度化がそのまま特定企業の受注になるとは限らない。工程変更、設備投資の決定、採用状況の確認が必要であり、今回の報道を根拠に未確認の発注先は挙げない。

結論は、HBMの成長を見るとき、記憶容量の需要に加えて、設計と製造の仕事がどこへ配分されるかを見ることだ。外注か内製かという二択より、顧客に認められた製品を、十分な利益を残して供給できる体制かどうかが重要になる。

出典と限界

個別の外注契約、供給数量、製品別原価、利益配分を確認できないため、業績への金額効果や目標株価は算出しない。原資料の確認にAIを活用し、事実・会社の説明・報道・分析を区別して作成した。